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ICO -霧の城- 宮部みゆき

元のゲームも大ファンなのである。登場人物たちはほとんどしゃべらず,主人公のイコはヒロインの少女の言葉がわからない。だけれども,ちょっとしたしぐさや精緻な描写でお互いの心や物語の背景が伝わってくるのである。未来少年コナンのように,非常に体力…

反逆 遠藤周作

「女王の教室」を見てるのだが,進藤ヒカルの部屋にこの本がおいてあったのを見て「そういや遠藤周作の作品でこれはまだだな」と読むことにした。 織田信長の家臣たち,そのうち織田信長の魅力に引かれ,同時に怯え,そして反逆していくアンビバレンツな感情…

母 三浦綾子

小林多喜二の母によって,彼女と息子の人生が語られていく。私は予備知識なく読んだので,本当にインタビューしたものだと思ってしまった。三浦綾子は生活感のある暖かい人々の描写がホントにうまいなぁと思う。 この本を読むと多喜二も偉いが両親も非常に立…

誰か 宮部みゆき

冒頭の詩から,暗い話を思い浮かべた。西条八十ってインパクトのある詩を書くなぁ。 しかしぞっとする暗さをメインにすえたのではないようだ。主人公が語り手というだけではない肉付けを持っていて,今夜は眠れない (角川文庫)のように連作にしていく作品な…

文壇アイドル論 斎藤美奈子

この方の作品が面白いという話を聞いていて,初めて読んでみた本。 ほとんど読んだことがあるのは村上春樹で,数冊というのが俵万智,吉本ばなな,村上龍,田中康夫。林真理子と上野千鶴子,立花隆は読んだことがなかった。 村上春樹の社会での捉えられ方と…

華岡青洲の妻 有吉佐和子

NHKでドラマ化されるということで再読。そうそう,マザー&ラヴァー見ているときにも再読してみようと思っていたんだった。江戸時代の医師,華岡青洲が世界的な外科医となった陰には母と妻が麻酔の人体実験に競って身を捧げるというすさまじい歴史があった。…

「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (同時代ライブラリー (349))」を読む (5)「人生とは」

序(id:hayaminami:20041225#p2),(1)(id:hayaminami:20041225#p3),(2)(id:hayaminami:20041226#p2),(3)(id:hayaminami:20041227#p2),(4)(id:hayaminami:20041228#p2)の続き。 そして,苦しみから歩き出し,テーマはより大局的な「人生とは」とい…

「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (同時代ライブラリー (349))」を読む (4)祈りとは

序(id:hayaminami:20041225#p2),(1)(id:hayaminami:20041225#p3),(2)(id:hayaminami:20041226#p2),(3)(id:hayaminami:20041227#p2)の続き。 祈りについては,三浦綾子を思い出す。氏は奇蹟についてよく触れておられるように感じる。一方で,何度も…

「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (同時代ライブラリー (349))」を読む (3)聖書から,大胆な結論を導き出す

序(id:hayaminami:20041225#p2),(1)(id:hayaminami:20041225#p3),(2)(id:hayaminami:20041226#p2)の続き。 ならば,そもそも神が「どんな解も導き出せる『全能』な存在」ではなく,人として自由であるままに人が苦しまないような解は存在しないのでは…

「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (同時代ライブラリー (349))」を読む (2)どうしてその人に不幸が起こったのか?

序(id:hayaminami:20041225#p2), (1)(id:hayaminami:20041225#p3)の続き。 犠牲者への他者の反応について,この本では以下のように述べている。 ドイツ語の心理学用語に,Schadenfreudeというのがあります。自分ではなく他人になにか不利益(Schaden)を…

「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (同時代ライブラリー (349))」を読む (1)テーマについて

上の続き。 「なぜ,善良な人が不幸にみまわれるのか?」というテーマは,不幸に出会った人だけの問題ではないと著者は言う。 それらの不幸は,正義と公平と住みよい世界を信じようとするすべての人々にとっての問題なのです。(P5) 実際,我々は新聞等でその…

「『なぜ 私だけが 苦しむのか 現代のヨブ記』H・S・クシュナー」を読む(序)

「ヨブ記」は大学生のときに買って読んだ。努力しているのに結果が出ず,どうしてこんなに苦しいのかという自分のあまあまな苦しみを,受難のエピソードとして名高い「ヨブ記」で解決できないかと思ったのである。しかし,そのときには何も得ることが出来ず…

「丸元淑生のクック・ブック」丸元淑生

数年前に健康診断でNGが出たことがあって,そのときに食生活を改善したいと思うようになった。一人暮らしでも改善するための本として丸元淑生のシステム料理学―男と女のクッキング8章 (文春文庫 ま 4-1)や システム自炊法―シングル・ライフの健康は、こう…

"The Sirens Of Titan" Kurt Vonnegut (1)

そんな中でやりたいことの1つが大昔に買った原著の「タイタンの妖女」を読むこと。昔過ぎなのか「はまぞう」で見つからなかったので同じ会社らしきのの新しい画像(まだないけど)をリンクしておく。 学生時代に買って電車の中でちょっとづつ読もうと思った…

「マクドナルド化する社会」ジョージ・リッツア

「マクドナルド化」とは,以下の4つの次元を持つ。 効率性…ある状況からある状況へ変化するための最適な方法を提供する(おなかが空いた→腹が膨れるものを/ドライブスルー) 計算可能性…量で測れる部分の重視。速度の速さ,ボリュームの多さなどがアピール…

私の個人主義 夏目漱石

夏目漱石は小説も好きだが,評論も思考の過程が誠実に感じられて好きだ。 前半は他人の思想を剽窃して威張ってみても不安が残る,ふらふらしてしまうものであり,自分が確かにわかるのは自分の感覚であり,そのしっかりした感覚を基礎に経験を積み上げていく…

「燃えよ剣」司馬遼太郎

購入して以前にも読んでいたのだが,土方の最後以外は話を全然覚えていないので読み直してみることにした。今回はドラマの顔ぶれを思い出しながら読めたため,大変筋立てが理解しやすかった。また,ドラマは時系列が微妙にずれていたということもこれで気づ…

「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月」水上勉…(3)

3月 「うちにあるもので,間に合わす」がテーマ。まずは高野豆腐。イギリスの劇作家のウェスカー氏が高野豆腐を食べて「スープがうまい」と褒めたというのは,わかる気がする。高野豆腐が出汁の美味さを引き立てるので,たぶん汁だけ飲んでもそううまく感じ…

「夜回り先生」水谷修

ラーメン屋さんでつけ麺を待ちながら読んでいてぐわっと泣きそうになる。私が住んでいるところは何故かうまいラーメン屋さんが多いのだ。しかしラーメン屋ばかりなので外食を続けると途方にくれることになるのだが。それはともかく。ETV特集や毎日の連載で知…

「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月」水上勉…(2)

1月 芋を皮ごとじっくり焼く話と水上氏が少年時に典座(お寺の食事係)をつとめていたという話。この本が良いのは趣味の料理でも,お金に変えるための料理でもなく,人が食べるための料理を,生活の中で作ることについて語っているからだ。このエッセイを書…

「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月」水上勉…(1)

水上勉氏が肺炎のため死去された。ご冥福をお祈りします。 「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月」を読み直してみようと思う。9月は松茸の章なので参考には出来ないけど(^^;せめて出汁をとってためてある昆布を煮てみよう。 この本を参考にカチ栗をかじったり(…

カラマーゾフの兄弟

反逆などで生きていかれるかい,俺は生きていたいんだぜ。ひとつお前自身,率直に言ってみてくれ,お前を名ざしてきくんだから,ちゃんと答えてくれよ。かりにお前自身,究極においては人々を幸福にし,最後には人々に平和と安らぎを与える目的で,人類の運…

「ちいろば先生物語」三浦綾子

榎本保郎という牧師の伝記。三浦綾子の印象では,氏と最初あわないように感じたということ。これは,似たキャラクターだからかも。その時々の行動には間違いや暴走はあったとしても,なんとも人柄が良いというか,人好きがするのだ。人が集まってしまう人格…

「垂里冴子のお見合いと推理」山口雅也

おっとりとした純日本女性の鏡たる垂里冴子がするお見合いは何故か事件ばかり。その真相を静かに見抜く冴子。なのだけれど,パンクな次女空美が楽しい。お見合いを持ってくる伯母との掛け合いが特に。 ところでこの小説に出てくるケーキ屋さんにこないだ行け…

氷雪の門

昨晩のニュースJAPANで,歴史に埋もれつつある九人の乙女の悲劇を描いた「氷雪の門」という映画が各地で上映されるというニュースをやっていた。 http://www.shinjo-office.com/ 九人の乙女の悲劇というのは,終戦直後の樺太で,ソ連軍から逃げ出す人々に情…