「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月」水上勉…(2)

1月
芋を皮ごとじっくり焼く話と水上氏が少年時に典座(お寺の食事係)をつとめていたという話。この本が良いのは趣味の料理でも,お金に変えるための料理でもなく,人が食べるための料理を,生活の中で作ることについて語っているからだ。このエッセイを書いているときの水上氏はもちろん典座ではなく,時間にも追われていないのだが。
2月
山椒のすりごきとほうれん草の話。このエピソードは漫画「美味しんぼ」でも語られている。ほうれん草の根を捨ててしまって和尚様に注意されるところから道元禅師の訓話に話が飛び,そして最後に和尚様がほうれん草をどうしなさいと言ったか,そしてほうれん草はどんな味がしたかに戻ってくる。12章の中で構成としても最も良いエッセイなのではないか。ほうれん草の根が甘いということは,「どっちの料理ショー」でも話題になっていて,そこでは根の赤い部分が大きなほうれん草を紹介していた。