「夜回り先生」水谷修

夜回り先生
ラーメン屋さんでつけ麺を待ちながら読んでいてぐわっと泣きそうになる。私が住んでいるところは何故かうまいラーメン屋さんが多いのだ。しかしラーメン屋ばかりなので外食を続けると途方にくれることになるのだが。それはともかく。ETV特集や毎日の連載で知っていた水谷先生の本。

1.夜回り水谷
やってきたことに自信はないが,子供たちに対して引くことなく向き合ってきたという水谷先生。「自分からリスクを負わずに,他人と気持ちを分かち合うことなんてできない。」
2.闘いの出発点
講演でも触れられていたシンナーで死んだ子供の話。自分が関わっていたということで,普通ならば思い出したくない出来事だと思うのだが,そこから問題に取り組むことでそれは忘れてはいけない出来事になったのだと思う。
5.償いきれない過ち
TVの講演を聞いていて最も衝撃を受けたエピソードだったかも。子供やお年寄りを狙うということは,自分には受け入れられないことだからだ。暴走族もツルんで悪いことするってのがダメだったりするのだが。おばあさんにとってどれだけそのお金を大事だったかが書かれたシーンを読みつつまた泣けてしまう。しかし,少年の反省は価値がある。それを引き出せる大人がいなければ,バイクでの引ったくりを誘うような仲間にまた引きずられちゃうんだろうと思う。
8.貧しさ
「比べれば比べるほど哀しくなるが,貧乏そのものは決して不幸じゃなかった。」貧乏以外でもそういえるんじゃないかと思う。
17.脱出
哀しいエピソードが多い中で,この話は鮮やかな印象。こういう経験をしているとその後ずっと人間が信じていけるだろうな。
20.教師へ
養護学校へ就職し,教えたり,相談に乗ったりということが出来ないことにクサっていたというのはとてもよくわかる。「私を求めてくれる子どもたちが,こんなにたくさんいる。そして私は,彼らの要望に応える能力を持っている。」「そこではできないこともあるが,そこでしかできないこともたくさんある。」他の職業にも言える話。
24.いいんだよ
「大切な子どもたちを昼の世界から排除する大人,大切な子どもたちを夜の世界へ引きずり込もうとする大人,何もしないくせに『子どもを救いたい』と言っている大人…。」「子どもたちはよく失敗するし,その失敗を許せない大人が多いからだ。」耳が痛い。「どんな子どもに対しても,まずは彼らの過去と今を認めた上で,しっかり褒めてあげてほしい。よくここまで生きてきたね,と。」

自分の身近に子どもがいないのだが,子どもたちをイメージではなく個々の存在として感じたいと思った。