「土を喰う日々―わが精進十二ヵ月」水上勉…(3)

3月
「うちにあるもので,間に合わす」がテーマ。まずは高野豆腐。イギリスの劇作家のウェスカー氏が高野豆腐を食べて「スープがうまい」と褒めたというのは,わかる気がする。高野豆腐が出汁の美味さを引き立てるので,たぶん汁だけ飲んでもそううまく感じないのではないかと思う。そして高野豆腐はたっぷりと汁を含むのだ。高野豆腐から染み出るからこそうまいスープを汁の美味さと思ってしまうのは自然に思える。また典座教訓から料理に向き合うときにも修行の道があるという話も味わい深い。家庭の主婦こそこの本に頷くのではないかと思う。