「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (同時代ライブラリー (349))」を読む (1)テーマについて

上の続き。
「なぜ,善良な人が不幸にみまわれるのか?」というテーマは,不幸に出会った人だけの問題ではないと著者は言う。

それらの不幸は,正義と公平と住みよい世界を信じようとするすべての人々にとっての問題なのです。(P5)

実際,我々は新聞等でそのような事件を知るたびに動揺する。そして,いろいろな結論に落ち着いていくだろう。中世の人の言葉として,
「なんのための苦しみかは教えてくださらなくてもかまいません。ただ,神よ,この苦しみがあなたのためのものであるという確信を与えてください」
という言葉が紹介されている。なんらかの意味を我々はそこに求めるのだ。そうでなければ耐えられない人が多いと私は思う。
沈黙 (新潮文庫)
この本を読んでいる間,ずっと遠藤周作のことを考えていた。『沈黙*1』はまさに同じことを書いていると思うのだ。この本の著者は遠藤周作の本を読んだことがあるだろうかと。
そこで遠藤周作の出した答えは,この著書の答えと等しいと私は感じている。ただ,より具体的に,そして人びとを鼓舞する力を持っているのはこちらの本かもしれない。
続く。

*1:「沈黙」においては,「意味はあるのか?」「私の信仰に基づく行動によって他者が傷つくとき,それでも行動を貫くべきなのか?」という問題を扱っていると思う。ロドリゴは,現実の悲惨さに向き合った末に,神と邂逅することとなる。