文壇アイドル論 斎藤美奈子

文壇アイドル論
この方の作品が面白いという話を聞いていて,初めて読んでみた本。
ほとんど読んだことがあるのは村上春樹で,数冊というのが俵万智吉本ばなな村上龍田中康夫林真理子上野千鶴子立花隆は読んだことがなかった。
村上春樹の社会での捉えられ方というのはまさにその通りなんだろうなぁと思う。自分としては「空気を感じられればいいじゃん」と思うのだが,ちゃんと捉えられなかった「スプートニクの恋人」なんかは読み解こうとしてしまったし。Ⅰの「文学バブル」は特に面白く読んだ。「折々に恋人の台詞を反芻し,浜辺やネット裏で恋人をじっと見つめ,それをいちいち三十一文字にしたためる女の子」ってそれだけでおかしい。
Ⅱについては「そんな流れがあったのか」という感じ。林真理子の小説を読んでみたくなった。また,上野千鶴子にはなんかことさらにきついような気がした。本文はともかく注で引用されている上野千鶴子のアグネス論争の言葉はそう変だとも思わなかったのだが。
Ⅲについては,知っていても自分のフィールドでないなぁと思ってた部分で,だからこそ気楽に楽しんでしまう。田中康夫の小説も「クリスタル」しか読んでないんで他のも読んでみたくなった。
作家論論というのが当初「?」と思ったけど,その文学を支持する層,攻撃する層がなぜそのような行動をしてしまうのかを分析することで作家自体の特質をときほぐしてスパッと斬っていくというのはうまいなぁ。