ICO -霧の城- 宮部みゆき

ICO  -霧の城-
元のゲームも大ファンなのである。登場人物たちはほとんどしゃべらず,主人公のイコはヒロインの少女の言葉がわからない。だけれども,ちょっとしたしぐさや精緻な描写でお互いの心や物語の背景が伝わってくるのである。未来少年コナンのように,非常に体力に優れた少年がとらわれの少女を救うために身を挺してアクションをするゲームだが,振動機能を使ってヒロインと手をつなぐと彼女の鼓動が伝わってくる。そして,普通のアクションゲームではミスして例えば爆弾を近くで爆発させてしまったりすると,それは失敗に過ぎないのだが,このゲームでそのようなことを何度も繰り返していると,イコがヒロインを救うためにどれだけ傷ついてもひたむきに前へ進もうとしているように見え,深い感動を覚えるのである。
元々のストーリーがそのように深い物語性を秘めているため,正直ゲームの中にも登場するシーンは自分でゲームをしていたときのほうが感動が深い。やはりゲームでキャラクターの視点で世界を見ている方がクリアに伝わってくるのである。ただ,オリジナルのシーンや女王とヒロインの関係について描かれた部分は良かったと思う。ゲームのイコが最初かわいそうでならなかったので,村の描写があり,親友のトトや育ての親たちが彼を愛しているということがわかってよかった。
ゲームの中のシーンがこれだけ出てくるなら,ラストの一連の流れをもう一歩踏み込んで描いて欲しかった。元々のラストは深い哀しみがあり,そしてその後に救いがあるのだが,そこの流れが自分には理解しきれていないので,その宮部みゆきの解釈を見てみたかった。