幕末太陽傳

先日,川島雄三監督の「幕末太陽傳」を見てきました。DVDでも持っていますが,一度スクリーンで見たいという念願がかないました。
石原裕次郎をはじめとして,岡田真澄二谷英明小林旭といったスターたちが浪士として若き姿を見せています。現在知っている役者たちの若さと勢いを感じて,なんだか「新選組!」を30年後に見たらこういう感慨を感じるのかもと思いながら見ていました。
私がこの作品を初めてみたのは昔「クィックジャパン」でエヴァンゲリオンかなにかに関連して川島作品が紹介されていたためです。だから,見る前から監督がフランキー堺演じる居残り左平次に託した想いは知っていて,左平次が1人のときだけ見せる暗さや,かなり序盤から体が悪い描写に気づいていましたが,もし知らなかったらどういう風に感じただろうと思います。明るさにばかり目がいって気がつかなかったかな。
お話は金がないくせに仲間を連れて豪遊し,挙句居残りとして留め置かれる左平次が,頭は回るしよく動くしで,金にシビアでありながらこになくてはならない人になっていくさまが爽快です。そして落語が元になっている遊郭の人々の人間模様がおかしい。
欲を出しては左平次にしてやられる遊郭の人々の中で,芦川いづみ演じる女中だけは誠実さと知恵で彼と渡り合います。その可憐さが宮崎アニメのヒロインみたいで素敵でした。
ラストは監督としては現代の街を左平次に走らせたかったが,周囲の反対でやめたという話。オープニングが(当時の)現代の品川から始まっていて,「さがみホテル」から「相模屋」へ移って話が始まるので,現代の街に戻ることは自然に思えました。お墓の細道を逃げ出すだけだと,「ヘボン先生についてアメリカへ行く」という彼の希望がいかにもかなわなそうで少し寂しいんです。