氷雪の門

昨晩のニュースJAPANで,歴史に埋もれつつある九人の乙女の悲劇を描いた「氷雪の門」という映画が各地で上映されるというニュースをやっていた。
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九人の乙女の悲劇というのは,終戦直後の樺太で,ソ連軍から逃げ出す人々に情報を送るべく電話交換局を守った九人の女性電話交換手が任務を全うした後自決したことをさす。
私はかつて稚内を旅行したとき,稚内公園の小高い丘から海を見下ろす氷雪の門と,その隣の「九人の乙女の碑」に興味を持ち,ネットを漁ったり「『九人の乙女』はなぜ死んだか(ISBN:4765290492)」という本を読んだりした。その書籍の覚書。

  • 樺太に残った交換業務の女性たちは,「残らねばならない」との命を受けたが,責任感と同時に,引き上げ船がまた来るという希望も持っていたらしい。
  • その建物にいた方が全員なくなったわけではない。同じ建物でも別のエリアの方は自決することなく無事生き延びたらしい。
  • 交換手のいた郵便局は,すさまじい銃撃により1階と2階で行き来がままならない状態だった。2階にある交換手たちの部屋は状況もわからない女性たちがとり残され,命令を出せる人間がそこにいなかったそうだ。そのときも他局との通信はおこなっていた。他局の人々は電話ごしに聞く諦めの声に死ぬな,上の人に指示を仰いでとにかく逃げろと言ったが,偉い人たちも攻めてきたソ連軍から逃げ連絡がつかなかったらしい。
  • そして,誰が持ち込んだのかわからない青酸カリと水の入ったバケツがあり,班長の女性がまず自殺をしてしまったらしい。正常な判断もつかないまま,次々にそれに続いてしまったようだ。彼女たちはまわりの見えない状況で自分で判断せざるを得なかった。他局の人々の必死の呼びかけにもかかわらず,真岡郵便局の女性たちからの応答はなくなっていった。
  • なお,交換手で生き残った女性の一人は夫となる男性から青酸カリをもらっていたが,彼の機転でうがい薬を渡していたため助かったそうだ。

私が本を読んだ印象ではこの悲劇は身を挺して人々を守った崇高な乙女たちの悲劇であり,同時に避けられたかもしれない悲劇であった。こういう話を聞くと,争いを減らしていく方向に向かないとその方々に申し訳が立たないと感じる。映画も行ける範囲でやるようになったら行ってみたいと思う。