「リアル」4巻(井上雄彦)

リアル (4)この漫画を買い始めたのは朝日新聞のサイトのコラムからだった。柾と野宮のエピソードを紹介していて,それで買おうと思った。
ここに描かれるそれぞれ性格も状況も違う登場人物たちのそれぞれの悲劇が,全く違った形で救われていくのを見ると,生きてるってすげーなーと思う。こう思えるのも,峻烈な感覚を味あわせてくれる描き方のためなんだろうけど。
一方で彼らはそれぞれ同じことをつぶやく。「何故自分が」「あのときああしていたらこうならなかったろうか」と。それに呼応する声はそれぞれ異なっている。
4巻では,戸川の運命が急展開していく現在と,彼がバスケに目覚めていく過去を描いている。過去を描くまでに4巻まで待ったんだろうなぁ。仲間たちの態度に不貞腐れていた戸川が,野宮に出会ってバスケを取り戻し,そして仲間たちと強くなっていくまでを読ませて,そしてその後にやっと戸川が味わった深い絶望と,そこで出会った山内,勝田,そして安積を怒涛のように描いているんだから参る。
虎は他人の弱さを許せるくらいに強い。だから,現実を受け入れてもっと強くなれるんだと思った。
少年だった戸川が,最後に腹が据わって大人の顔になって,そして現在の戸川にそのままつながる。見事。