「愛しき友よ」

オープニングの「三谷幸喜」の文字におつかれさまと思う。そして曲が終わるギリギリまでキャストが出ていることにしみじみ。
今回,阿南健治が出ずっぱりだったのは,史実で宮川音五郎が遺体を掘り起こして埋葬したということだけでなく,小林隆がそうであったように,空気を任せられるサンシャインボーイズの阿南健治に最終回を託したんじゃないかと思った。
子供に見せるのにコブシを口に入れる近藤。泣かれなくて良かったっすね。
勝は近藤に全てかぶってもらおうじゃないかと。しかしさあ,カブせるなら会津でも戦起こらないくらいかぶせてほしかったよー。なんかもー最終回になると勝も息切れか?土方に一泡吹かせてやれって,死を覚悟して一泡吹かせるんなら徳川のためじゃなく近藤のためにやったほうがいいじゃんかー!
徳川にも知らないと言われたということにショックを受ける近藤。有馬の工作も西郷には通じない。まっすぐさだけを残して有馬も去っていく。永倉は渡世人となって仇と追われる身になった大村と再会する。徳川も,新政府も変りはしない。正義だったものが悪になっていく。人じたいは何も変っていないという永倉。そうやって彼は長生きして世の中を見つめていくのだ。
姉妹で同じ歯って…というのは言うまでも無いのか,沖田とお孝。うー,こんなラストが待っていたとは…。前に沖田を逃がしたようにまっすぐに敵と渡り合って斬られるなんて!!最後の沖田の剣は見事だった。血溜まりの中の蟻を逃がしても,そこにある空気はとても寂しい。
容保公は無念じゃばっかりかよ,と思ったけど,前に歩き出したわけだなぁ。そして虎徹を託され容保を主君と仰ぐようになった斉藤。やっぱ仕事を与えられるといきいきするな。
野際陽子は表情に迫力がある。やっぱりすごいなぁ。つねさんは結局京都への見送りと同じように,視線でしか送ることが出来なかったんだな。彼の傍にいたのはやはり土方だったんだな。ホントにつねと勇が一緒にいられたのはちょっとだったんだなとしみじみと悲しくなる。
しかし朝から飲みっぱなしのしげるに再会したのかと思ったらそうじゃなかったんだ左之助。喧嘩別れで終わらなくてよかったよね。そっか,こうやって明るく終われるんだ,と思う。
捨助,ここまで活躍するとは。しかも今回も「近藤が逃がそうとしてるって今まで気づかなかったのかよ?!」と思わせておいて,最後に駄目押しで近藤に殉ずるのだ。ついていけるのは彼だけだったから。史実に縛られた人々は動けないから。自分としては,史実の彼らはまだ負けるつもりじゃなくて,蝦夷地に国を造るとか少なくとも死んで終わるつもりはなかったからついていかなかったんだと思うのだが,話の中ではそれが少しぶれているように思えた。だから捨助が呼ばれもしないのに,お利巧に先々や周囲のことを考えるようなことをせずに動いてくれてありがたかった。しかも皆はそれ知らないんだよな……。
最後はほんといいシーンが多くて,DVD売れますよきっと…と思ってしまう。新見錦のシーンもちゃんと入っていて,自分にとっては新選組という大河の凄さを印象付け,彼らの道すじを方向付ける回だったので,非常に腑に落ちる思いである。彼の死こそが新選組という組織のドラマ的基盤を形づくったと思うのだ*1
1年間通して見るつもりではあったけど,よく見通せたなぁとしみじみしている。彼らを見ていて,一本筋が通ったものが見えてくるものというよりも,それぞれの迷いに親しみを感じるように思える。自分としては山南の立ち位置が一番現代的で理解出来たので,後半は歯がゆい思いをすることが多かった。しかしその中でも,脇でそれぞれに迷い,行動していた人々に共感するのである。

*1:相島一之さんばんざい